Cocoonの吹き出しイラストを独自で用意したイラストに変更しました。
以前は、いらすとやのイラストを、作者のみふねたかしさんに許可を頂いて、利用させていただいていました。
けれど、WordPressのライセンスであるGPLを100%適用した形でテーマを配布するとなると、どうしても「いらすとや利用規定」と「100%GPL」に相反する部分が出てきてしまいました。
ですので、今回はそれに対応するためのアイコンイラスト変更です。
以前の状態の問題点
元々、CocoonはSimplicityと同様に100%GPLで配布するつもりで公開していました。
GPLの詳細はこちら。
ただ、v0.6.9までのCocooは吹き出し機能のサンプルに、いらすとやの顔イラストを利用させていただいていました。
顔イラストは、作者のみふねさんに、以下のように特別な許可を頂いた条件の下、利用させていただいていました※。
- Cocoon(無料テーマ)での利用とすること
- 吹き出しで使用されているイラスト13点のみの利用とすること
- 画像を同梱配布せずにCDNで利用すること
けれど、この条件で100%GPLで配布するとなると、「Cocoon再利用者は上記条件外となってしまうな…」と考えたため、以下のように規約で「イラスト利用部分のコードの削除」をお願いしていました。
Cocoonコードを再利用する際はイラストを使用しない処理を追加(使用部分のコードを削除)した上で配布してください。
浅はかながら、これで「GPL」と「イラスト利用規定」の双方大丈夫と思っていました。
GPL的に不備があった
しかし、「自由ソフトウェアとは?」にも書かれているようにGPLには「配布する自由」というのがあります。
改変した版を他に配布する自由 (第三の自由)。これにより、変更がコミュニティ全体にとって利益となる機会を提供できます。ソースコードへのアクセスは、この前提条件となります。
これは完全に僕の勉強不足なのですが、この「配布する自由」には、「変更したものもしてないものも、配布手数料ありでもなしでも、どこの誰にでも自由に再配布できる」という意味があるそうです(フォーラムで教えていただきました)。
要は、第三者が再利用するにあたっての自由を保障するために、制限を加えてはいけないということです。
なので、僕が規約で書いた「(いらすとやの)イラストを使用しないようにコードを改変(削除)してから配布してください」というのは、「配布する自由」もしくは「制限しない」ということに反してしまいます。
しかし、イラストを利用できるまま再配布となると、今度はCocoon再利用者がいらすとや利用規定に反する形になってしまいます。
いらすとや利用規定に反しない限り、個人で「いらすとやイラスト」を登録して利用するのは問題ないと思うので、今後とも吹き出し機能等でご利用ください。
双方のライセンス解決方法
これら「GPL」と「イラストのライセンス」双方を解決する手段としては、以下の2つの方法が考えられました。
- PHPファイルのみGPLとし、PHP以外はGPLとしないスプリットライセンスとする
- 独自でイラストを用意してイラストもGPLとする
スプリットライセンスによる解決
WordPressのGPLは「Wordpressなしでは動かないPHPファイル」のみに適用されます。
WordPress テーマは WordPress の著作権の元にあるコードの派生物を含んでいます。それぞれ独自の作品である画像、CSS、PHP ファイルをまとめたこれらのテーマは、全体的を GPL ライセンスにする必要はありません。むしろ、PHP ファイルは GPL ライセンスの要件に制約されるが、画像や CSS はそうではないと言えます。サードパーティのテーマ開発者は、希望するなら制限付きの著作権を適用することができます。
テーマがWordpress派生物だからといって、Wordpressなしでも成り立つ、CSS、JavaScript、画像にまで適用する必要はありません。
ですので、CocoonのPHPコードはそのままに「CSSでイラストを利用しない処理を施して配布」すれば、「GPL」にも「イラスト利用規定」にも反しないことになります(とフォーラムで教えていただきました)。
ただ僕は、こちらの解決方法も検討はしたのですが、できれば100%GPLで配布したかったので採用は見送りました。
独自イラストを用意する解決方法
元々、いらすとやさんの絵柄が好きなのと、汎用性の高さから、イラストを「Cocoonの吹き出し機能のデモ」で利用させていただきました。
ただ今回、「100%GPL」と「イラスト利用規定」がバッティングしてしまったわけです。
そうなると、イラスト利用を残念ながら諦めて、自前で「自分が著作権を持つイラスト」を用意し、使用ライセンスをGPLとして公開するという手段も考えられます。
ただ、自前でイラストを用意すると言っても、僕は絵は描けません。
そうなると、「絵を購入する」か、「制作依頼」するしかありません。
双方の面倒くささを比較すると、好きな絵を選んで購入できた方が、簡単そうです。
そんなわけで、「権利ごと購入できるイラスト販売サイトはないものか」と、まずは方々探してみました。
しかしながら、そういった都合の良いイラスト販売サイトは見つかりませんでした。
その最中に、発したツイートがこちら。
顔イラストの権利ごと買い取れるイラストサイトとかはないだろうか。
今、Cocoon吹き出し機能デモで利用せて頂いているいらすとやさんの絵は、汎用的で大好きなんだけど、テーマを100%GPLにしようとすると、どうしてもGPL or いらすと利用規約どちらかに反してしまうので。— わいひら@寝ログ (@MrYhira) April 20, 2018
その際に、最初になつきさんから以下のような返信をいただきました。
先日Cocoon ダウンロードしまして、これから頑張ってWP覚えようと思ってるものです。無料テーマのお礼といってはなんですが、顔イラスト提供しましょうか!?
— なつき?アラフォ母さん (@nac_mart) April 20, 2018
これも何かのご縁と思い、お願いすることに。
ただ流石に、イラスト制作を無料でしていただくのは申し訳ないので、イラスト制作費を支払う形で依頼することにしました。
是非お願いしたく思います!
ただ、ライセンスをGPLにしてしまうと、テーマとともに誰にでも自由に改変・再配布可能となってしまいますが、それでもよろしいでしょうか?
もし、それでもよろしければ、制作料をお支払いする形ででもお願いしたく思います。— わいひら@寝ログ (@MrYhira) April 20, 2018
イラストが完成
以前は、こんな感じでいらすとやさんのイラストを13点利用させていただいていました。
で今回、なつきさんに依頼して、10点イラストを制作していただきました。
これらイラストは、権利込みの値段で制作依頼したものです。
ですので、これらイラストの利用ライセンスをGPLとして配布することで、テーマを100%GPLとできるようになりました。
全イラストはこちら。
100%GPLにしたかった理由
前作のSimplicityに引き続き、今回も100%GPLにしたかったのは、「誰でも自由に開発を引き継げるようにしておきたいから」です。
というのも、僕も人間なのでいつ何処で何があるか分かりません。
重い病気にかかって更新が不可能になってしまうこともあるかもしません。そうでなくとも、「急にテーマ開発に飽きてしまい、他の事がしたくなる」なんて事も無いとは言えません。
そんなときに、誰かが「Cocoonを継続して使いたい」と思ってくれたら、その方が開発の後を手軽に引き継げるようにはしておきたかったんです。
なので、もし僕に何かあって、サーバーが仮に契約解除になったとしても、ファイルが消えることがないように、GitHubにもファイルは公開してあります。
スプリットライセンスの再利用は手間がかかる
もしこれが、100%GPLでなくスプリットライセンスだった場合、PHPファイルは使えても、CSSやJavaScript、画像は1から作成し直す必要があります。
そんな面倒な開発は、誰もしたがらないんじゃないかと思います。やるにしても、かなり腰が重くなるだろうなと。
なので、もし仮に僕がテーマ開発出来なくなることがあったとしても「テーマファイルをコピーするだけで、すぐに誰でも開発を引き継げる体制」にはしておきたかったという感じです。
こうすることで、現在Cocoonテーマ利用中の方は、もし仮に開発が止まったとしても「誰かが引き継いだものを使える可能性」は高くなると思います(※開発者が現れるかどうかは別)。
まとめ
というわけで、Cocoon正式版(v1.0.0)公開の前に、ライセンスに矛盾がないようにしておきたかったので、今回独自イラストを追加するという形にしました。
Cocoon利用規約の方も、この記事を公開後に修正するつもりです。
ただ僕も、完全にGPLを理解しているわけではないので、まだ何かしらの不備はあるかもしれません。その際は、ご指摘いただければその都度修正していきたいと思います。
そんなわけで、1~2週間ほど不具合報告の様子を見て、問題なければCocoonを正式版として公開したいと思います。